2017年11月05日

浅田次郎作品を読もう!_『特別な一日』

今回は映画レビューではありません

先日スペシャルドラマを放送した浅田次郎作の『琥珀』
正直原作と実写化の隔たりが気になるのでドラマを見る前に、
この短編が載っている短編集『夕映え天使』を購入しました。

今回レビューするのはその『琥珀』のひとつ前の短編
ある一人の男性社員が定年退職をする一日を描いた『特別な一日』
こちらのレビューはどうしても書きたい!しかしTwitterでは文字数制限がきついのでこちらに書くことにしました。

尚、この感想には物語の核心に迫る内容がありますので、
実際にこの短編小説『特別な一日』を読んだ人だけ続きを読んで下さい。 

とある会社の営業部長高橋は本日60歳のため定年退職を迎える。
しかし、見送りの花束や言葉は既に済ませてしまい会社にはまばらに人が残っているだけでガランとしている。
上司に挨拶しようにもすでに帰っているか休暇を取っているかで会社にはほとんどいないのであった。

そんな中見送りに来てくれた一人の女性社長秘書と話し、
長い時間腐れ縁であり特に仲の良くなかった同僚の現社長と腹を割って話し、
駅近くの馴染みの立ち飲み屋の注文以外話したことのない亭主と話をし、
電車の中で見知らぬ男性とと話し、
そして妻と娘の待つ我が家に帰る。

その間、何度も今日を『特別な一日』にしてはいけないと誓う高橋マサヤ
いつも通り・・・いつも通り・・・と考えながらも、
いつもとは違うやり取りを多くの人としている主人公
彼の『特別な一日』とは一体何か?

それはここから分かる!!
 
 
その前に
この『特別な一日』に貴方ならどうするか?

私の場合、この短編を読んだ後少し考えた。
まずこの日の5日前から会社に有休の申請をする。
おそらくこれは確実に通る。
そのまま荷物をまとめて実家に戻る。
間違いなくこの時期だと混んでいそうだけれどずっと立っていてもおそらく苦ではない、
残りの日は特に何するわけでもなく
弟とカードゲームをするなり、親と花札をするなり
練習したトランペットを思いっきり吹いていたい
そして有休の最後の日
暗いうちに近所の橋の上に立ってどちらから明るくなるかも分からない空を見続け、
明るくなってきたところで最後に思いっきり叫ぶと思う。
それか徹夜明けで寝ている。
 
 

『特別な一日』そうしないと決めたのは果たして・・・
それについてはここからが大事なのです。



***午前零時***


突然始まる全てのラジオ放送局テレビ局から放送される天皇陛下の玉音放送
高橋の家族は家のソファでそれを聞いていた。

残りの時間は三年
超巨大高速彗星の衝突
その日は全世界共通で『特別な一日』にしないように、
全世界の人々がそう決めた日
それが今日であった・・・

「どうして俺なんだよ!」

今日を特別な日にしないために多くの人は通常通り仕事をしなければならない
それは天皇陛下、総理大臣、高橋の腐れ縁の現会社社長も同じ
一緒にいたい人がいるのに、こんなところにいたくないのに
今日を特別な日にしないために私事より仕事を優先する何人もの人が
「どうして俺なんだよ!」という思いの中
妻と最後の時を過ごす高橋は太陽とは違う明かりで夜が明けるのを見て何を思ったのか?

色々と考えさせらる作品でした。

最初は現実的な話なのかなと思っていましたが、唐突に玉音放送という言葉が出てきて
「実は戦争のお話だった!?」と思い、いったん戻ってもそんな様子はなく
読み進めると彗星の衝突により人類が滅亡する可能性が非常に高いという内容で、
「あれ?間違えて次の話を読んでた?」と思い何度もページをめくり直した。

『特別な一日』は主人公の男性が定年退職するお話ではなく、
地球に彗星がぶつかり人類が滅亡する最後の日を『特別な一日』にしないというお話でした。
虚を突かれるとは正にこの事です。

ファンタジーと現実との融合、浅田次郎作品の短編の面白さはこういうところにあると思います。

『特別な一日』あなたならどう過ごしますか?
posted by MaRio at 23:16| Comment(0) | レビュー | 更新情報をチェックする
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